適正飲酒の取り組み

飲酒と健康に関する知識

飲酒と健康との関係について考えてみましょう。

 お酒に強いか弱いかは、実は体質によって決まっています。アルコールが体内に入るとまずアルコール脱水素酵素(ADH)によってアセトアルデヒドに分解されます。このために、顔面の紅潮、頭痛、吐き気、頻脈などの不快な症状が起きます。

このアセトアルデヒドを分解するのが、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)です。この酵素には、Ⅰ型とⅡ型がありますが、血中の濃度が低い時には、まずⅡ型(ALDHⅡ)が活躍します。ところが、日本人の場合、40%の人がALDHⅡの働きが弱い「低活性型」でお酒に弱く、4%が全くない「不活性型」で全くお酒を飲めない人だと言われています。

ALDHⅡの不活性な人は、実はモンゴロイド系の人々の間にしか存在しません。この不活性型は、アメリカ大陸の先住民のなかにもいますから、彼らがアジアから大移動して行ったはるか以前に、突然変異が起こり、その遺伝子が、世界に広がっていったのでしょう。ちなみに、コーカソイド系やネグロイド系の人々には、この不活性型はみられません(文献①)。日本国内でも、東北や南九州にはALDHⅡ不活性な人が少ないという研究もあり、興味深いことです(文献②)。

なお、同じ量のお酒を飲んでも、体重の重い人ほど血中のアルコール濃度は低くなりますから、同じ体質の人でも、体重によって、お酒に強い弱いの個人差があります。

「ALDHⅡ」低活性型+不活性型の割合
イラスト
原田勝二・Journal the Anthropological Society of Nippon,Vol 99.NO.2.1991より改変
文献①
Genetic Polymorphism of Alcohol Metabolyzing Enzymes and Its Implication to Human Ecology
Shoji Harada, Institute of Community Medicine, University of Tsukuba
Journal of the Anthropological Society of Nippon, 99 (2) ,p123-139, 1991
文献②
アルコール代謝酵素の分類と多型
-日本人における特異性
原田勝二 筑波大学社会医学系
Jpn. J. Alcohol & Drug Dependence 36 (2), 85-106, 2001

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