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専務記者会見

小野里専務理事業界専門紙記者会見(2025年1月23日)

 2025年の日本経済は、米国をはじめとする前年から本年にかけて政権交代した各国リーダーの外交政策や、世界各地での紛争の情勢など不安定要素はあるものの、持ち直しの兆しを見せております。
 今後この流れを継続してデフレから脱却するためには、物価上昇を上回る賃上げ、それを実現するための持続的な経済成長が必要と言われておりますが、ビール酒造組合といたしましても、アルコールの有害な使用の低減を目的とした適正飲酒啓発活動や、人手不足に対応した持続可能な物流の実現に向けた取り組み、安全・安心な原材料確保、カーボンニュートラルをはじめとした環境問題への取り組みなど、諸々の社会課題を踏まえた上で活動に取り組み、ビール業界の健全な成長、発展に貢献してまいります。
 2025年度の主要課題に対する具体的な活動内容は以下の通りです。

(1)アルコール関連問題への取組み

 WHOが掲げる「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」について、国際機関から継続的に情報を得ながら、今後展開されるアルコール関連政策へ積極的に関与していく必要があります。具体的には2025年9月に国連NCDハイレベル会合が開催されますが、アルコールの有害な使用を低減するためには単なる規制強化でなく民間事業者も含めた啓発活動が不可欠であることをWBA*1やIARD*2と連携しながら訴えていきたいと思います。
 国内では2026年に予定される「第3期アルコール健康障害対策推進基本計画」の策定に向けて2024年10月より関係者会議が開催されています。ビール業界はアルコール関連問題に自主的に対応していきながら、マーケティング活動を展開していくことが重要であると考え、積極的に計画策定へ関与してまいります。
 アルコールの有害な使用を低減させるための啓発活動としては、20歳未満飲酒防止や妊産婦飲酒防止、さらには適正飲酒の推進活動にも取組んでいます。健康日本21(第3次)が掲げている生活習慣病リスクを高める量を飲酒している者の減少(目標:男女計10%,女性6.4%)と連動するかたちで、2025年「飲み方カエルPROJECT」は女性をメインターゲットとしながらも男性も含めた啓発活動へと発展させます。これにより、飲酒ガイドラインを踏まえながら、生活習慣病リスクを高める量を飲酒している方々に対して行動変容を促す取組みを推進してまいります。
 また、ビール酒造組合は2024年4月より酒類業中央団体連絡協議会(酒中連)のアルコール関連問題ワーキンググループの事務局を務めています。酒類業界全体の課題である「純アルコール量の容器への表記」をワーキンググループで協議していく等の取組みを進めてまいります。

(2)公正取引推進への取組み

 ビール酒造組合は「ビール製造業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」、「ビールの表示に関する公正競争規約」を適切に運用し、ビール酒造組合が主催する委員会や全国各エリアの支部調査員との合同会議を通じ、公正な競争環境づくりに引き続き努めてまいります。

(3)酒税に関する要望活動

 ビール酒造組合は2026年以降のビール・発泡酒のさらなる減税を実現するために、財務省・国税庁・各政党・国会議員に酒税に関する要望を行います。要望実現の可能性を高めるために国会議員とのコミュニケーションを深め、業界市況や組合及び加盟各社の活動に対する理解促進を図ります。消費者アンケート調査からの飲用動向や消費購買データから消費者の実態を的確に把握した上で要望を行います。
 「酒税制度の簡素合理化要望」については、加盟各社から新規要望を募るとともに、継続中の要望事項に関しては、必要なデータ収集や事例調査を行った上で優先度を明確にし、酒中連へ提出いたします。また、国税庁とは適宜、要望事項検討の進捗状況を確認し、実現を目指します。
 加えて、2026年10月酒税改正に向けてさらに効率良く税務事務が行えるよう活動を進めてまいります。

(4)環境への取組み

 引き続き、経団連のカーボンニュートラル行動計画と循環型社会形成自主行動計画に参画し、CO2排出量削減・廃棄物対策に取組んでまいります。
 CO2排出量削減については、カーボンニュートラル行動計画フェーズⅡ目標達成を目指し、Scope1,2では、加盟各社ビール工場での高効率設備導入や省エネルギー活動等を推進するとともに、新規技術の導入や再生可能エネルギーの活用も進めてまいります。Scope3の取組みとしては、今後もビール業界にとって影響が大きいカテゴリーである容器包装関係(アルミ缶や段ボール)や原料関係の業界に優先的にアプローチして課題を明確にし、新規テーマの立案や共同研究など互いに協働できる活動を進めてまいります。
 また、廃棄物対策については、ビール工場での副産物や廃棄物の排出抑制と分別回収の徹底により、廃棄物再資源化率100%、使用済みプラスチックの有効利用率100%を維持・継続できるよう取組んでまいります。
 これからもビール酒造組合は加盟各社と共に、SDGs、環境関連の取組みを通じて社会に貢献してまいります。

(5)物流効率化への取組み

 ビール酒造組合と加盟各社は、物流の2024年問題の解決に向けて、「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」を策定しました。2025年はこの計画を関係団体の理解・協力を得て推進し、効率化のための新たな仕組みの構築や運用面の改善等、業界における物流課題の解決に取組みます。
 また、2025年4月に施行される新物効法に基づき、よりサステナブルな物流環境を構築してまいります。
 物流インフラの基盤としてその重要性がさらに高まっているパレットに関しては、回収率に問題のある届け先への改善活動の継続とともに、流通構造の可視化にもチャレンジします。
 また、一般社団法人Pパレ共同使用会とも連携し、流通外からの回収活動や不正使用防止に向けた啓発の強化とともに、従来、手が付けられていなかったパレットの回転率向上に向けた検討も行ってまいります。
 国が進めるパレット標準化の動きにも注視しながら、共同使用会は9型パレット使用のエコシステムとして有効に機能しており、標準パレット(11型)への切り替えが極めて困難であることを国やパレット標準化推進分科会の委員にも認識していただくべく、働きかけを行ってまいります。

(6)原料に関する取組み

 ビール酒造組合と加盟各社は、原料から最終製品に至る迄、さらなる品質の向上と安全性の確保に向けて取組んでまいります。特に、国産大麦、ホップの品質向上に継続的に取組みます。国産大麦に関しては、気候変動や病害虫への対応を含め、醸造特性・農業生産性に優れたより良い大麦品種の選抜、普及に関係各所とともに取組んでまいります。
 輸入麦芽では、海外製麦会社によるジベレリン酸を使用した麦芽の製造が増加しています。一方で、現状ではジベレリン酸を使用した麦芽の輸入は認められていません。ジベレリン酸を使用した麦芽を輸入できれば、調達リスクの低減、品質安定化、コスト削減が期待されるため、輸入が可能となるように加盟各社や関係各所と連携しながら進めていきます。
 原料の委託研究では、大麦に関する二つのテーマの取組みを継続します。一つは、海外大麦主産地(欧州)との生産コスト構造比較を通じた国産大麦競争力向上調査です。輸入大麦価格の高騰や物流の混乱から国産大麦の注目度が高まっているため、今後の国産ビール大麦の調達・契約方法や育種目標の方針を検討するための基礎データとし、持続的な農業に貢献していきます。もう一つは、水感受性因子をターゲットとした遺伝子解析です。水感受性が高いとされる大麦品種について、得られた水感受性因子を遺伝子マーカーとして活用することを目指します。これにより、新品種育種において初期段階での優良系統の選抜が期待できます。
 国産ホップについては、ホップ生産における病害虫防除に関する試験として、ホップ根頭がんしゅ病の防除対策の検討を開始します。国内で発生している菌種を特定するとともに、新規開発の根頭がんしゅ病用の生物防除剤について、ホップにおける防除効果を確認する試験を実施し、さらなる防除体系の構築、安定供給を目指してまいります。

(7)技術力向上への取組み

 国際技術委員会(BCOJ)活動、ビール醸造技術連絡会、安全や分析に関する勉強会等を通して、国内外のビール技術者に加えて、異業種の技術者との交流を促進してまいります。また日本のビール製造技術・分析技術のさらなる向上や若手技術者の育成を図り、世界における日本ビールの存在感を高めてまいります。
 「BCOJビール分析法」や「ビールの基本技術」の改訂作業は完了しました。ビール技術者へ最新情報を提供できるよう、2025年内の発刊へ向けて活動を進めていく予定です。
 2025年8月にはBrewing Summit 2025がアメリカ パームデザートで開催されます。ビール酒造組合からも同会合に参加し、BCOJ議長や委員、加盟各社の参加者と協働して、海外の最新技術情報の収集と国内展開に努めてまいります。
 今後もビール技術者がビールの魅力を高め、お客様に新たな商品や価値の提案をしていけるよう、技術や情報を発信し、共有できる場を提供してまいります。

※1 World Brewing Allianceの略
※2 International Alliance for Responsible Drinkingの略

以上

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