ビール酒造組合では、加盟各社が魅力的な商品の開発、美味しさの実現、安全の確保等に関する技術的な知見を高めていくため、「国際技術委員会(BCOJ*1)」を設置しています。 BCOJは、2018年8月にアメリカ サンディエゴで開催されたBrewing Summit及びASBC*2技術委員会に参加、Brewing SummitではBCOJ分析委員会での共同実験「アルコライザーによる酒母、もろみ中のアルコール分析」についての報告を行いました。また、11月にベルギー ブリュッセルで開催されたEBC*3分析委員会に参加し、分析法に関する情報交換を行いました。 国内では11月に「BCOJ年次大会」を開催しました。年次大会では加盟各社による海外での学会発表の再演とともに、ASBC議長による「木樽熟成/サワービールの香味と分析」と題した講演、インターステラテクノロジズ株式会社代表取締役社長による「民間ロケット開発の現状と今後の発展」と題した招待講演を行いました。これらの再演や講演、海外組織との交流は、ビール技術者にとって、ビール業界のみならず異業種の技術開発からも多くを学ぶ機会となっています。なお、この年次大会は、1991年の第1回開催から四半世紀が経過したことから、日本醸造協会誌2018年9月号に「ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)年次大会~四半世紀のあゆみ~」として総論を寄稿しました。 2019年はEBCがベルギー アントワープで、ASBCがアメリカ ニューオリンズで開催される予定です。BCOJからも議長をはじめ多くの委員が参加します。 ビール酒造組合は、今後もこうしたBCOJの活動を通じて、ビール醸造・製造技術の向上、分析法の開発、海外組織との技術交流に取組んでまいります。 *1 Brewery Convention of Japan *2 American Society of Brewing Chemistsの略 *3 European Brewery Conventionの略
リリース/会見
専務記者会見
●板垣専務理事業界専門紙記者会見(2019年1月24日)
2018年の日本経済は、雇用・所得環境が改善し、天災による災害の影響はあるものの、実質成長率4年連続プラス成長を達成する見込みです。一方世界情勢を見ると、トランプ政権の保護貿易主義を巡る世界各国との対立や中東・北朝鮮情勢の地政学リスク、米国の金利上昇、原油高等が懸念されています。
このような状況の中2018年のビール課税移出数量は、2,455千kl(前年比94.8%)となりました。また、同期間の発泡酒は635千kl(前年比91.2%)、新ジャンルは1,897千kl(前年比103.7%)、ビール類合計では4,987千kl(前年比97.5%)となりました。(数量は小数点第1位を四捨五入)
国内のビール系飲料市場を取り巻く環境は厳しい状況が続いていますが、ビール酒造組合は、業界の公正取引を推進し、消費者の皆様に適正飲酒をしっかりと啓発してまいります。また、これらの活動を通じ、グローバルな課題であるアルコール関連問題の解決に対して貢献してまいります。
本年、ビール酒造組合が注力していく活動は以下の通りです。
▼(1)適正飲酒に対する取組み
2010年5月にWHOで「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」が採択され、翌2011年にはNCD(非感染性疾患)予防のためのアクションプランが国連で合意されました。これを受けWHOは2025年迄にNCDによる成人死亡を25%低減するとし、アルコールに関しては有害な使用の10%を削減する目標が掲げられました。
ビール酒造組合は、アルコール業界のグローバルな課題に取り組むIARDの一員として、酒類業界の立場からWHOの世界戦略実現のために尽力してまいります。
WHOや国連の動きを受け、国内においてもアルコール関連問題に対する取組みを総合的かつ計画的に推進するための計画である、「アルコール健康障害対策推進基本計画」が策定されています。
「アルコール健康障害対策推進基本計画」の中では「飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底し、将来にわたるアルコール健康障害の発生を予防する」を重点課題とし、目標として「飲酒に伴うリスクに関する知識の普及を徹底」することにより、『生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している者の割合の減少』 『未成年者の飲酒なくす』 『妊娠中の飲酒をなくす』という3つの目標が明記されています。
ビール酒造組合はこれら3つの目標の達成に貢献すべく取組んでいます。
主な取組みとして、未成年者飲酒防止については、「STOP!20歳未満飲酒」プロジェクトの展開、「20歳未満飲酒防止教育 学校コンクール」の実施、20歳未満飲酒防止教育支援ツールの提供・貸与等であり、これらを通じて未成年者飲酒防止啓発活動の裾野を拡げてまいります。
また国民健康・栄養調査(厚生労働省)の調査結果からアルコール健康障害対策の中で相対的に、その重要性が増している、女性の飲酒に対しては、「ほど酔い女子PROJECT」、スマートフォンアプリ「妊婦手帳」「母子健康手帳」での情報発信を通じ、お酒との上手な付き合い方の知識を身につけてもらうよう取組んでまいります。
▼(2)公正取引推進への取組み
ビール酒造組合は「ビール製造業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」及び「ビールの表示に関する公正競争規約」を自主的に定め、その適正な運用に向けて、関係部会の運営、営業拠点でのヒアリング等を行ってまいります。
▼(3)酒税に関する要望活動について
「平成29年度税制改正」により、ビール・発泡酒・新ジャンル商品の税率は、段階的に見直され、2026年10月に、1klあたり155,000円に一本化されることになりました。ビールの税率は、1klあたり65,000円の減税となる一方、発泡酒は20,750円の増税、新ジャンル商品は75,000円の増税となります。
一本化されるビール、発泡酒の税率は、他の酒類と比べ依然として高い税率であり、同じ発泡性酒類に分類される「その他の発泡性酒類」が、1klあたり100,000円となることと比較しても、なお大きな格差があります。また、諸外国と比べても、高い税率といえます。
引き続き、ビール・発泡酒のさらなる減税を要望してまいります。
▼(4)物流効率化への取組み
物流を取り巻く環境は、ドライバーやトラック不足にともなう物流インフラの逼迫、それに呼応した物流費の高騰など年々厳しさを増しています。
ビール酒造組合では、加盟各社とともに物流インフラのツールとしてその重要性が高まっているPパレ(プラスチックパレット)に関連する諸課題に対応すべく 一般社団法人Pパレ共同使用会(以下、共同使用会)と協働し、Pパレの回収強化に向けた活動に取組んでいます。
共同使用会の加盟社数は、2018年11月現在で108社(前年同期から2社増加)となり、加盟社との連携をより高めるための施策として全国を数ブロックに分けたブロック制を立ち上げることとしました。この取組みにより、より多くの情報収集や、地域ごとの課題の共有、対策の検討を行う体制を構築していきます。
2018年は、管理外回収の取組みとして、大規模市場への取組みを強化し、横浜市中央市場と移転した東京都中央卸売市場築地市場からの不正使用パレット回収を行い、それぞれ、331枚、994枚を回収することができました。
また、ビール4社による初めての共同取組みとして「東北6県におけるPパレ共同回収の先行展開」を2018年11月からスタートしました。特定した得意先に対して、Pパレ回収をビール4社で分担(回収代表社を選定)し、得意先ごとに回収代表社がビール4社分のPパレを回収するスキームです。
この取組みにより、回収車両の積載率の向上、回収距離の短縮や回収運用に関わるトラック台数の削減によるCO2削減が促進され、削減できると試算しています。また、得意先においても、Pパレの返却先が1社に集約されることから業務負担の軽減に繋がるものと考えています。今回の先行展開の効果検証に基づき、ビール4社による実施エリアの拡大、ならびにPパレ共同使用会全体への展開を目指してまいります。
ビール酒造組合は、Pパレ共同使用会とともに、Pパレの不正使用防止に向けた啓発活動や法的手段による対応を継続し、Pパレの円滑な需給体制の構築に向け、取組んでまいります。
▼(5)環境への取組み
ビール酒造組合では、環境への取組みとして経団連の「低炭素社会実行計画」に参画し、CO2排出量削減目標を掲げ、取組んでいます。
ビール業界では2020年目標をCO2排出量51.1万トンとして取組みを開始しました。
その結果、液体燃料から都市ガスなど気体燃料への転換を進めたことにより、2017年はCO2排出量を46.2万トンまで削減、2020年目標を大きくクリアし、既に2030年の目標も達成しています。今後も新たな目標を設定し、継続してCO2排出量削減に取組んでいきます。
また、「循環型社会形成自主行動計画」では、加盟各社の全ビール工場で発生する副産物や廃棄物について、再資源化を徹底することで、2000年より再資源化率100%を継続しています。
▼(6)技術力向上への取組み
ビール酒造組合では、加盟各社が魅力的な商品の開発、美味しさの実現、安全の確保等に関する技術的な知見を高めていくため、「国際技術委員会(BCOJ*1)」を設置しています。
BCOJは、2018年8月にアメリカ サンディエゴで開催されたBrewing Summit及びASBC*2技術委員会に参加、Brewing SummitではBCOJ分析委員会での共同実験「アルコライザーによる酒母、もろみ中のアルコール分析」についての報告を行いました。また、11月にベルギー ブリュッセルで開催されたEBC*3分析委員会に参加し、分析法に関する情報交換を行いました。
国内では11月に「BCOJ年次大会」を開催しました。年次大会では加盟各社による海外での学会発表の再演とともに、ASBC議長による「木樽熟成/サワービールの香味と分析」と題した講演、インターステラテクノロジズ株式会社代表取締役社長による「民間ロケット開発の現状と今後の発展」と題した招待講演を行いました。これらの再演や講演、海外組織との交流は、ビール技術者にとって、ビール業界のみならず異業種の技術開発からも多くを学ぶ機会となっています。なお、この年次大会は、1991年の第1回開催から四半世紀が経過したことから、日本醸造協会誌2018年9月号に「ビール酒造組合国際技術委員会(BCOJ)年次大会~四半世紀のあゆみ~」として総論を寄稿しました。
2019年はEBCがベルギー アントワープで、ASBCがアメリカ ニューオリンズで開催される予定です。BCOJからも議長をはじめ多くの委員が参加します。
ビール酒造組合は、今後もこうしたBCOJの活動を通じて、ビール醸造・製造技術の向上、分析法の開発、海外組織との技術交流に取組んでまいります。
*1 Brewery Convention of Japan
*2 American Society of Brewing Chemistsの略
*3 European Brewery Conventionの略
▼(7)食の安全・安心への取組み
ビール酒造組合では、原料である大麦・ホップから最終製品に至る迄、さらなる品質の向上と安全性の確保を重要課題の一つととらえ活動しています。
食品表示法が2015年4月に施行されてから、現在は5年間の経過措置期間中ですが、遺伝子組換え表示を含む、変更が必要な表示内容について検討を進めています。また、「加工食品の原料原産地表示制度に関する食品表示基準の一部を改正する内閣府令」が2017年9月に公布、施行され、さらに2018年6月、食品等事業者へのHACCPによる衛生管理の制度化を含んだ「食品衛生法等の一部を改正する法律」が公布されました。これら法律改正などの動きに対して、関係する省庁、団体と協議、連携しながら対応を進めてまいります。
今後もお客様に安全・安心で魅力的な商品をお届けできるよう、加盟各社とともに取組んでまいります。
以上