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リリース/会見

会長記者会見

磯崎会長代表理事記者会見(平成25年8月22日)

磯崎会長代表理事

8月22日、ビール業界に関わる
各社記者にご参集いただき、
磯崎会長代表理事記者会見を
実施しました。
その要旨は下記のとおりです。

 本年上半期の日本経済は、政府の経済政策による円安の進行や海外経済の持ち直しによる下支えのもと、金融緩和により株価が持ち直すなどの明るい兆しもありました。足元の消費動向に関しては底堅さを感じる反面、依然として先行きは不透明であり、今後の成長に向けて更なる対策が期待される状況です。
 直近のビール市場は上半期(1~6月累計)時点では、加盟各社は様々な新商品を発売し、また樽生ビールの飲み方提案やアンテナショップによる情報発信等を実施してビールの魅力を訴求してまいりましたが、課税移出数量は対前年比98.1%と昨年を下回る結果となりました。
 もう少し詳しく四半期ごとに見てみますと、1~3月は前年比94.3%でしたが、4~6月は100.9%となっております。また参考までに、7月も前年を超えております。景気の堅調な回復が期待されますが当業界もそれについていけるよう、ビールの魅力を訴え新しい価値を提案し、市場の活性化に今まで通り取組んでまいります。

(1)公正取引の推進

 ビール酒造組合加盟各社は、消費者の適正な商品選択を保護し公正な競争を確保するために、関係省庁の指導のもと、「ビールの表示に関する公正競争規約」と「ビール製造業における景品類の提供の制限に関する公正競争規約」を遵守しています。
 また平成18年8月に国税庁より、「酒類に関する公正な取引のための指針」が発出されております。ビール酒造組合加盟各社は公正な取引の推進のため、自主ガイドラインを厳格に遵守するとともに、継続的な見直しを行ってきております。
 ビール酒造組合は、各社自主ガイドラインの遵守体制の整備と的確な運用を促進するとともに、国税庁・公正取引委員会発出のガイドライン等の周知を図っております。本年も4~6月、全国8ヶ所にて合同支部調査員会を開催し、「公正な取引の推進」「優越的地位の濫用問題」「労務提供問題」を中心にヒアリングと意見交換を行いました。
 引き続き、市場実態の把握に努めながら、公正な取引の推進に取り組んでまいります。

(2)税制要望活動

 ビールに課されている酒税、消費税の合計額は、小売価格の45.1%を占めており、突出して高い水準です。発泡酒についても34.3%、新ジャンル商品でも24.9%といずれも高い水準です。諸外国と比較しても、日本のビールの酒税額はドイツ、フランスの15倍、アメリカの14倍となっています。また、国内の他の酒類と比較してもビール・発泡酒・新ジャンル商品の酒税は、高率なものとなっております。
(ビール酒造組合調べ 平成24年6月)
 平成元年に、消費税が導入された際、乗用車、電化製品等の奢侈品への個別間接税は段階的に廃止されました。また、従価税や級別制度が廃止されたこと等により、清酒やウィスキーに関しては実質的に大幅な減税が行われてきました。ビールは、消費税導入時に調整程度の減税は行われたものの、今日まで高い税率のまま残されてきています。
 「発泡酒の税制を考える会」が昨年7月に実施した「ビール・発泡酒・新ジャンル商品の飲用動向と税金に関する調査」では、ビール・発泡酒・新ジャンル商品の酒税が、「高すぎる」と感じている消費者は約7割に達しています。
 一方、消費税は平成26年4月には8%、平成27年10月には10%へ引き上げられる予定です。酒類には、酒税と消費税が併課されており、消費税の引き上げにより、消費者の税負担はますます重いものとなります。
 消費量がピークだった平成6年から2割以上落ち込んだ総需要を回復するためにも、ビール・発泡酒・新ジャンル商品に課せられた酒税の大幅な減税は、ビール業界にとって最重要の課題であります。
 ビール酒造組合は、「発泡酒の税制を考える会」と共に、消費者の皆様のご期待に応えるためにも、消費税増税時の、ビール類の酒税の減税要望活動に全力で取り組んでまいります。

(3)適正飲酒に対する取り組み

①WHOの取り組みと業界の対応
 WHOは、2010年5月に採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」の推進に取組んでいます。一方で、2011年9月の国連ハイレベル会合での「NCD(Non communicable diseases 非感染性疾患)の予防と統制に関する政治宣言」を受けて、WHOは国連に答申を提出することになっていました。
 議論は「目標と、それを押測る指標」「行動目標」の2つについて検討が続けられて来ました。当初WHOの原案では、目標は「純アルコール換算で一人当たり消費量の10%削減」、指標は「成人1人あたりのアルコール消費量」が、行動計画はWHO自体が「ベスト・バイズ」と呼ぶ、「酒税増税、入手の制限、広告の規制・禁止」が提案されました。これらのWHOの提案に賛同する加盟国もありましたが、一方で、目標については「問題なのはアルコールそのものではなく、アルコールの有害な使用である」という、WHOのアルコール世界戦略の精神に反するものであること、行動目標についてはこれらの施策が効果的であるという証拠に乏しく、また違法酒・密造酒がはびこる発展途上国では効果が薄いことなどの批判もありました。
 活発な議論の末、今年5月に開催されたWHO総会において、目標については「アルコールの『有害な使用』の最低10%削減」に、指標は全加盟国一律の指標は設けず、①成人1人あたりの年間純アルコール消費量、②成人の一時的な多量飲酒の傾向、③成人の飲酒に起因する障害・疾病の発生率、の3項目から各国は国情に応じて設定することとなりました。行動計画については、WHOの提唱するベスト・バイズは包括的な施策のうちの3項目という扱いとなりました。
 ビール酒造組合はメーカーの立場から適正飲酒の啓発などを通じ、NCDの低減に貢献してまいります。
 またビール酒造組合が加盟するGAPG(Global Alcohol Producers Group)は、酒類業界の立場からWHOの世界戦略実現に貢献すべく、酒類業界の「コミットメント」を2012年に発表しました。骨子は①未成年者飲酒の低減、②マーケティング自主基準の強化、③消費者への情報提供と責任ある製品開発、④飲酒運転の低減、⑤小売店との連携、です。
 ビール酒造組合では、この業界コミットメントを日本国内で実現していくための検討をしています。GAPGの一員として、この業界コミットメントを推進することにより、WHOアルコール世界戦略に貢献し、アルコールの有害な使用の低減に取り組んでまいります。

(注)GAPG加盟企業・団体一覧   平成25年07月31日現在 13企業・団体
アンハイザー・ブッシュ・インベブ、バカルディ、ビーム・グローバル・スピリッツ・アンド・ ワイン、ブラウン・フォーマン、コンステレーション・ブランズ、ディアジオ、ハイネケン、ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、モルソン・クアーズ、ペルノ・リカール、SAB ミラー、UBグループ

②未成年者飲酒防止への取り組み
 平成17年にスタートした未成年者飲酒防止の啓発活動である「STOP!未成年者飲酒プロジェクト」につきましては、本年も4月に引き続き、未成年者飲酒のリスクが高まる年末に焦点を当て、強力に推進してまいります。
 このプロジェクトでは、未成年者飲酒防止を呼びかけるメッセージを作成し、全国9エリア(首都圏、中京地区、京阪神地区、四国地区、札幌市、仙台市、広島市、福岡市、那覇市)において、従来の交通広告、新聞、ラジオに加え、トレインチャンネル、インターネット広告等の媒体も活用して展開してまいります。
また「未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校賞募集キャンペーン」は、平成14年にスタートし、本年で12回目を迎えております。本キャンペーンは、中学生・高校生自身がポスターやスローガンを制作することで、未成年者飲酒防止に対する意識を高めることを目的としています。
 この取り組みは、学校や家庭・地域を巻き込んだ活動になっており、地道ながら大変意義深いものと考えております。本年1月には、審査委員長の東ちづるさんが、昨年学校賞を受賞した中学校・高等学校を訪問し、講演会を実施するとともに、受賞校所在地の県知事等を表敬訪問し、学校賞の受賞と未成年者飲酒防止の取り組みを報告しました。
 本年度もアルコールに関する学習の教材として、また「学校賞」の応募促進も目的として、「酩酊状態疑似体験ゴーグル」の貸し出しや、「アルコールパッチテストセット」の無償提供を継続していきます。
 ビール酒造組合では、未成年者飲酒の防止に向け、引き続き、両キャンペーンを中心とした啓発活動に積極的に取り組んでまいります。

③共通啓発冊子の提供
  適正飲酒の推進という観点では、飲酒における適量を知ることや、妊産婦の飲酒防止、飲酒運転禁止などいくつもの重要なポイントがあります。
ビール酒造組合では昨年12月に啓発冊子「適正飲酒のススメ」を加盟各社の協力のもとで制作しました。成人式における地方自治体からの新成人への配布や大学での新入生への配布、また職場やご家庭での学習において今までに20万部以上が利用されております。
 これらのような業界の自主的な適正飲酒啓発活動を極めて重要なものと認識しており、今後も継続的に推進してまいります。

④広告の自主規制
  ビール酒造組合加盟各社は、テレビ広告において、酒類の自主基準で規定されている「未成年者飲酒防止」「適正飲酒」「妊娠・授乳中の飲酒防止」に加え、「リサイクル」「飲酒運転防止」の計5項目の注意表示を掲出しており、昨年8月以降は、より視認性を高める取り組みを行ってきました。
 またノンアルコール製品についても、酒類との誤飲・誤認防止や、未成年者を飲酒に誘引する可能性等にも配慮すべきとの判断から、商品への表示、販売・マーケティング方法のあり方等について自主基準を策定し、昨年12月より実施してきております。

(4)一般社団法人Pパレ共同使用会の設立について

 平成25年3月15日、キリンビール株式会社、サッポロビール株式会社、サントリービジネスエキスパート株式会社、アサヒビール株式会社の4社は、「一般社団法人Pパレ共同使用会」を設立しました。
 ビール4社は、平成4年からPパレの共同使用・無選別回収(得意先からメーカーごとに選別することなく回収すること)を開始し、お得意先様も含めたパレットの利用者の物流効率化と環境負荷軽減に努めてまいりました。
 平成7年には、ビール4社以外の酒類メーカーにも共同使用を拡大し、昨年1年間で、約3,800万枚が加盟社の製品出荷に使用されています。
 一方、パレットの未回収・流出が継続的に発生し、特に最近は増加傾向となっており、昨年1年間では約33万枚もの未回収・流出が発生しております。
 今回の一般社団法人化により、パレットの共同利用の一層の推進と不正使用に対する活動を強化してまいります。
 また、来年春以降を目処に、加盟社とお得意先様が一緒にパレットを管理できる「共通受払いシステム」を導入し、Pパレ共同使用会全体で、指定伝票を使用したパレットの受払いと共通受払いシステムでの受払い管理を実施する予定です。
 一般社団法人化に伴う様々な取り組みを通じて、パレット回収100%に向けて、引き続き、取り組んでまいります。

(5)環境課題

①地球温暖化の防止
 ビール酒造組合は、日本経団連の環境自主行動計画(温暖化対策編)に設立当初より参加することで、「地球温暖化防止の取り組み」を進めてまいりました。既に加盟社平均で2009年から1990年比50%以上のCO₂削減を達成しております。
 昨年2012年は、環境自主行動計画(温暖化対策編)の最終年で、只今フォローアップ調査中ですが、2008年から2012年の5カ年計画の削減目標は達成する込みであります。
 近年は多品種少量生産が進む中で一層のCO₂削減を推進していくことは、メーカーにとって厳しいものがありますが、今年始まった低炭素社会実行計画では2020年のCO₂排出目標を2020年のBAU*52.8万トンから5万トン削減し、47.8万トン(1990年比57.5%削減)と掲げており、引き続き産業界全体のCO₂削減に貢献してまいりたいと考えております。
  *BAU : Business as usualの頭文字。
  二酸化炭素削減活動を何も実施しなかった場合の将来の予測排出量のこと。

②循環型社会の実現
 日本経団連の環境自主行動計画のもうひとつの柱である「循環型社会の実現に向けた取り組み」では、加盟社の全ビール工場で発生する副産物や廃棄物について、再資源化を徹底し、2009年より最終処分量ゼロを達成しています。
 容器包装に関しては、関係する8団体で策定した自主行動計画に基づき、ビール業界としてもその責務を果たすべく、全力で取り組んでまいりました。

 22011年のビール業界に関係する分野のリサイクル率は、
・ガラスびん : 69.6%(2015年目標70%以上)
・スチール缶 : 90.4%(  同   85%以上)
・アルミ缶 : 92.6%(  同   90%以上)
・段ボール: 96.2%(  同   95%以上)

となっております。ビール酒造組合は、目標達成に向けて、着実に取り組みを進めております。
 本年は「容器包装リサイクル法」の見直しの議論が開始される予定であり、ビール業界は、自らの役割を果たしながら循環型社会の実現に向け、積極的に貢献してまいります。

(6)国際技術委員会(BCOJ:Brewing Congress of Japan)

 魅力的な商品の開発、美味しさの実現、安全の確保等に関する技術的な知見を高めていくため、ビール酒造組合では「国際技術委員会(BCOJ)」を設置しております。主として、

・ビール醸造技術の向上と品質保証に関る分析法の整備
・海外機関との協働による分析法の国際標準化推進
・国内・海外ビール関連組織との技術交流

の三点を課題として活動しております。
 本年5月に米国アリゾナ州ツーソンで開催されたASBC(American Society of Brewing Chemists)大会においてBCOJは、昨年BCOJビール分析法として新たに確立した「HPLC-UV法によるビール、発泡酒、新ジャンルの総プリン体定量法」を発表しました。 またASBC及び、EBC(European Brewery Convention)の各分析委員会にBCOJも参加し分析法に関する情報交換を行っています。 さらに5月には、ルクセンブルグで開催されたEBC Executive CommitteeにBCOJ議長が ASBC議長と共に参加し、分析法の日米欧での標準化をさらに推進していく事で合意しています。
 一方、本年11月7日と8日には、永田町の星陵会館において、ASBC、EBCをはじめとした海外の醸造学会でビール各社が発表した演題を再度英語で講演する「BCOJ年次大会」を開催する予定です。なお本年次大会の招待講演には、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」の著者 岩崎夏海氏及び、ビール酒造組合とアルコールの効能について共同研究を行っている広島大学 加藤範久教授を予定しております。
 今後とも、こうした活動を通じて、世界でも最先端のビール醸造技術、分析技術の開発に取り組んでまいります。

(7)安全・安心

 ビール酒造組合は、お客様に「安心」をお届けできるよう、加盟各社とともに原材料から製品に至るまで、法令の遵守はもとより、安全性の確保とさらなる品質の向上に全力を挙げて取り組んでおります。
 国産ビール大麦については、国、県の関係者や大麦生産者とタンパク質含量の適正化、優良品種育種活動等を推進してまいります。国産ホップについては、農薬「ポジティブリスト制度」の確実な遵守と品質向上に向け、国、県の関係者、ホップ生産者、農薬メーカー等と連携して活動してまいります。福島原発事故に伴う農作物の放射能汚染については、引き続き国の方針に基づくと同時にビール各社の独自の検査により品質保証に取り組んでまいります。
 食品表示法が6月に成立し、2年以内に施行されることになります。酒類もその対象となることから、今後制定される基準を遵守し、お客様にご理解のいただける表示を目指してまいります。
 ビール酒造組合は、以上述べました事業を通じて公正な事業活動の機会を確保し、酒税の保全を責務として、酒類業界の安定と健全な発展に努力を傾注してまいります。
 また東日本大震災から2年5ヶ月が経過しましたが、ビール酒造組合加盟各社は引  き続き企業の社会的責任のもと復興への支援に取り組んでまいります。

以上

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