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リリース/会見

会長記者会見

小路会長代表理事記者会見(平成24年8月21日)

小路会長代表理事

8月21日、ビール業界に関わる
各社記者にご参集いただき、
小路会長代表理事記者会見を
実施しました。
その要旨は下記のとおりです。


 本年上半期の日本経済は、昨年の東日本大震災の復興需要等のプラス要因があるものの、長引くデフレや高水準の失業率、さらには欧州の債務危機や新興国経済の減速等のマイナス要因もあり、依然先行きは不透明な状況が続いています。

 直近のビール市場は、上半期(1~6月累計)時点では、加盟各社の新商品や限定商品の投入、定番商品のリニューアル、生ビールの新しい提供方法や飲み方の提案、更にはアンテナショップによる情報発信等により、課税移出数量は対前年比102.0%と6年振りに前年を上回る結果となりました。特に樽は103.4%となっており、業務用市場も回復傾向にあります。

 しかしながら、7月は、上旬の大雨や例年に比べて気温が低かった等の影響もあり、1~7月累計では1,527千kl、対前年比99.5%となっております。また、発泡酒は449千kl、対前年比89.8%、新ジャンルは1,113千kl、対前年比101.2%となっており、ビール、発泡酒、新ジャンルを含めたビール系飲料全体の課税移出数量の対前年比は98.5%と前年実績を下回る状況です。

 ビール業界を取り巻く環境は引き続き厳しいものがありますが、ビール酒造組合と加盟各社は、「お客様の生活に潤いを与える」というビール本来の価値を今まで以上にご提案・ご提供し、市場の活性化に努力してまいります。

(1)公正取引の推進

 平成18年8月に国税庁より、「酒類に関する公正な取引のための指針」が発出されております。また、独占禁止法の一部改正にともない、平成21年12月に、公正取引委員会の「不当廉売ガイドライン等」が改定されました。平成22年11月には「優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の考え方」が公表されましたが、昨年6月には小売企業に対し、この考え方に基づく課徴金納付命令が初めて出され、公正な取引の推進に対する社会的要請はより高まっています。

 ビール酒造組合加盟各社は公正な取引の推進のため、自主ガイドラインを厳格に遵守するとともに、継続的な見直しを行っております。

 また、ビール酒造組合は、各社自主ガイドラインの遵守体制の整備と的確な運用を促進するとともに、国税庁・公正取引委員会発出のガイドライン等の周知を図っております。

 ビール酒造組合では、本年1~3月、全国9ヶ所にて支部調査員会を開催し、「公正な取引の推進」「優越的地位の濫用問題」「労務提供問題」を中心にヒアリングと意見交換を行いました。

 引き続き、市場実態の把握に努めながら、公正取引に向けた活動に取り組んでまいります。

(2)税制要望活動

 ビールに課されている酒税、消費税の合計額は、小売価格の45.1%を占めており、突出して高い水準です。発泡酒についても34.3%、新ジャンル商品でも24.9%といずれも高い水準です。諸外国と比較しても、日本のビールの酒税額はドイツ、フランスの15倍、アメリカの14倍となっています。また、国内の他の酒類と比較してもビール・発泡酒・新ジャンル商品の酒税は、高率なものとなっております。

(ビール酒造組合調べ 平成24年6月)

 平成元年(1989年)に、消費税が導入された際、乗用車、電化製品等の奢侈品への個別間接税は段階的に廃止されました。また、従価税や級別制度が廃止されたこと等により、清酒やウィスキーに関しては実質的に大幅な減税が行われてきました。ビールは、消費税導入時に調整程度の減税は行われたものの、今日まで高い税率のまま残されてきています。

 「発泡酒の税制を考える会」が本年7月に実施した「『ビール』『発泡酒』『新ジャンル商品』の飲用動向と税金に関する調査」では、ビール・発泡酒・新ジャンル商品の酒税が、「高すぎる」と感じている消費者は約7割に達しています。

 一方、8月10日、国会において、消費税を平成26年4月に8%、平成27年10月には10%へ引き上げることを含む法案が可決されました。酒類には、酒税と消費税が併課されており、消費税の引き上げにより、消費者の税負担はますます重いものとなります。

 平成6年をピークに年々減少傾向にある総需要を回復するためにも、ビール・発泡酒・新ジャンル商品に課せられた酒税の大幅な減税は、ビール業界にとって最重要の課題であります。

 ビール酒造組合は、「発泡酒の税制を考える会」と共に、消費者の皆様のご期待に応えるためにも、ビール酒税の減税要望活動に全力で取り組んでまいります。

(3)適正飲酒に対する取り組み

①WHOの取り組みと業界の対応
 WHOでは、2010年5月に採択した「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」の推進に取組んでいます。2011年9月の国連ハイレベル会合でのNCD(Non communicable diseases 非伝染性疾患)の予防と統制に関する政治宣言を受けて、WHOは2012年内に目標と指標を含む包括的なモニタリングの枠組みを準備することになりました。

 アルコールに関しては、年初に発行された第一次検討文書では、「純アルコール換算で一人当たり消費量の10%削減」目標が記載されました。これに対しては、加盟国の反対が強く3月の第二次検討文書では一旦削除されました。しかし、5月のWHO総会での加盟国の意見も踏まえ、7月下旬に発行された第三次検討文書では、再度この目標が記載されています。

 ビール酒造組合は、世界の大手アルコールメーカーで構成するGAPG(Global Alcohol Producers Group)に加盟し、酒類業界の立場からWHOの世界戦略の推進に取り組んでおります。

 酒類業界としましては、WHOとその加盟国が策定しようとしている、NCDの予防と統制に関する包括的なモニタリングの枠組みの中にアルコールの有害な使用についての適切な目標が含まれることは支持しております。

 しかしながら、一人当たり消費量の10%削減は、アルコールの「有害な」使用ではなく、適正な飲酒を含む総量削減を目標としており、この点でWHOアルコール世界戦略と全く相容れないものであります。

 ビール酒造組合は、より適切な目標として、一人当たり消費量削減に代わり、多量飲酒の削減を関係官庁やWHO事務局に対し、積極的に働きかけ、引き続きWHOの世界戦略の推進に貢献してまいります。

(注)GAPG加盟企業・団体一覧   平成24年07月31日現在 13企業・団体

アンハイザー・ブッシュ・インベブ、バカルディ、ビーム・グローバル・スピリッツ・アンド・ワイン、ブラウン・フォーマン、コンステレーション・ブランズ、ディアジオ、ハイネケン、ビール酒造組合、日本洋酒酒造組合、モルソン・クアーズ、ペルノ・リカール、SAB ミラー、UBグループ

②未成年者飲酒防止への取り組み
 平成17年にスタートした未成年者飲酒防止の啓発活動である「STOP!未成年者飲酒プロジェクト」につきましては、本年も4月に引き続き、未成年者飲酒のリスクが高まる年末に焦点を当て、強力に推進してまいります。

 このプロジェクトでは、未成年者飲酒防止を呼びかけるメッセージを作成し、全国9エリア(首都圏、中京地区、京阪神地区、四国地区、札幌市、仙台市、広島市、福岡市、那覇市)において、従来の交通広告、新聞、ラジオに加え、屋外大型ビジョンやトレインチャンネル、インターネット広告等の媒体も活用して展開してまいります。

 また、コンビニエンスストア、スーパーマーケット、カラオケスタジオ業界の参加協力をいただいていることもあり、未成年者の本キャンペーン認知率も95.5%にまで達しています。調査によりますと、「スーパーやコンビニエンスストアでお酒が買いにくい。」「未成年者飲酒を社会が監視している。」と感じている未成年者の比率も、着実に上がってきております。

 今後も創意工夫を重ね、より効果的なプロジェクトとなるよう展開してまいります。

 「未成年者飲酒防止ポスター・スローガン・学校賞募集キャンペーン」は、平成14年にスタートし、本年で11回目を迎えます。本キャンペーンは、中学生・高校生自身がポスターやスローガンを制作することで、未成年者飲酒防止に対する意識を高めることを目的としています。

 また、この取り組みは、学校や家庭・地域を巻き込んだ活動になっており、地道ながら大変意義深いものと考えております。本年1月には、審査委員長の東ちづるさんが、昨年学校賞を受賞した中学校・高等学校を訪問し、講演会を実施するとともに、受賞校所在地の県知事を表敬訪問し、学校賞の受賞と未成年者飲酒防止の取り組みを報告しました。

 本年度は「学校賞」の応募を促進するため、「酩酊状態疑似体験ゴーグル」の貸し出しや、「アルコールパッチテストセット」の無償提供などを新たに開始いたしました。

 このキャンペーンは6月15日に募集を開始、9月30日に締め切った後、審査委員会を経て、11月23日(勤労感謝の日)に都内ホテルにて表彰式を実施いたします。

 厚生労働省の調査によると、近年、日本では、未成年者の飲酒経験率は減少傾向にあることが報告されており、ビール酒造組合の取り組みが少なからず貢献しているものと考えております。

 ビール酒造組合では、未成年者飲酒の防止に向け、引き続き、両キャンペーンを中心とした啓発活動に積極的に取り組んでまいります。

(3)広告の自主規制
  ビール酒造組合加盟各社は、テレビ広告において、酒類の自主基準で規定されている「未成年者飲酒防止」「適正飲酒」「妊娠・授乳中の飲酒防止」に加え、「リサイクル」「飲酒運転防止」の計5項目の注意表示を掲出しています。

さらに、8月以降制作するテレビ広告については、この5項目の注意表示を2回に分けて掲出して実質的な掲出時間を従来の2倍とする、原則として注意表示の背景を白抜きとする等、視認性をより高める取り組みを行っております。

ノンアルコール製品については、自動車の運転時や休肝日などに安心してお飲みいただける商品として、近年急速に市場が拡大しております。一方で、 酒類との誤飲・誤認防止や、未成年者を飲酒に誘引する可能性等にも配慮すべきとの判断から、商品への表示、販売・マーケティング方法のあり方等について検 討を進めております。

ビール酒造組合は、アルコールメーカーとしての社会的責任を果たすという意味からも、こうした適正飲酒への取り組みに工夫と改善を加えつつ、全力を傾注してまいります。

(4)物流への取り組み

 ビール酒造組合が事務局を運営している「Pパレ共同使用会」の加盟社数は、7月31日現在58社となりました。年間約3,500万枚のパレットが製品出荷に使用され、共同使用を進めることにより、物流効率の向上を図っております。

 一方、会に加盟せずにパレットを使用している企業・組織に対しては、無断使用の禁止やパレット返還の申し入れを行い、流失防止に積極的に取り組ん でおります。平成20年12月からは、酒類・飲料の流通外へ流出しているパレットの回収も開始し、本年6月までに9万枚以上を回収しました。

 さらに、パレットの流通実態調査や物流専門紙への広告掲載等を通じて、適正な使用に関する啓発活動も行っております。これらの活動の結果、パレットの回収率は99%に達しております。

 しかしながら、平成23年における出荷・回収の差異(未回収や流出)は約35万枚に達しております。こうした未回収枚数は年々拡大傾向にあり、一層の流出防止・回収促進が急務となっております。

 その対策として、本年はパレットの流通経路を確実に把握するためのシステム化や共同使用会の組織強化に向けた検討を行っております。

 ビール酒造組合は、引き続き「Pパレ共同使用会」の活動を充実させ、一層の物流効率化に取り組んでまいります。

(注)Pパレ共同使用会加盟企業一覧   平成24年07月31日現在 会員58社

アサヒビール㈱ アサヒ飲料㈱ キリンビール㈱ キリンビバレッジ㈱ メルシャン㈱ 
サッポロビール㈱ サッポロ飲料㈱ ㈱ポッカコーポレーション サントリー酒類㈱ 
サントリーフーズ㈱ サントリーワインインターナショナル㈱
サントリービア&スピリッツ㈱  三和酒類㈱ 土佐鶴酒造㈱ 大関㈱ 菊正宗酒造㈱
月桂冠㈱ 小西酒造㈱ 沢の鶴㈱  辰馬本家酒造㈱ 日本盛㈱ 白鶴酒造㈱ 銀盤酒造㈱
霧島酒造㈱ 長龍酒造㈱ 高橋酒造㈱  宝酒造㈱ 盛田㈱ 大口酒造㈱ ㈱一本義久保本店
黄桜㈱ 札幌酒精工業㈱ 長島研醸(有)  萱島酒造(有) 齊藤酒造㈱ 八鹿酒造㈱
北の誉酒造㈱ 小正醸造㈱ 雲海酒造㈱ 合同酒精㈱  ホッピービバレッジ㈱
火の国酒造㈱ 秋田酒類製造㈱ 眞路㈱ 田苑酒造㈱ 富永貿易㈱  福徳長酒類㈱
山元酒造㈱ 清洲桜醸造㈱ 神楽酒造㈱ 中埜酒造㈱ 高千穂酒造㈱ ヤヱガキ酒造㈱
若潮酒造㈱ 秋田県醗酵工業㈱ 白金酒造㈱ 指宿酒造㈱ 賀茂鶴酒造㈱

(5)環境課題

①地球温暖化防止
 ビール酒造組合は、日本経団連の「環境自主行動計画」に設立当初より参加することで、地球温暖化対策への取り組みを進めてきました。既に2009年から、加盟社平均で1990年比50%を超えるCO2削減を達成しております。

 多品種少量生産が進む中で、一層のCO2削減を推進していくことはメーカーにとって厳しいものがありますが、低炭素社会の実現に向け、2013年 より始まる日本経団連の「低炭素社会実行計画」に参加し、産業界全体のCO2削減に引き続き貢献してまいりたいと考えております。

②循環型社会の実現
 日本経団連の環境自主行動計画のもうひとつの柱である「循環型社会の実現に向けた取り組み」では、加盟社の全ビール工場で発生する副産物や廃棄物について、再資源化を徹底し、2009年より最終処分量ゼロを達成しています。

 容器包装に関しては、関係する8団体で策定した自主行動計画に基づき、ビール業界としてもその責務を果たすべく、全力で取り組んでまいりました。

 2010年のビール業界に関係する分野のリサイクル率は、

・ガラスびん : 67.1%(2010年目標70%以上)
・スチール缶 : 89.4%(  同   85%以上)
・アルミ缶 : 92.6%(  同   90%以上)
・段ボール: 99.3%(  同   90%以上)

となっております。ビール酒造組合は、目標達成に向けて、着実に取り組みを進めております。

 2013年には「改正容器包装リサイクル法」の見直しが予定されており、ビール業界は、自らの役割を果たしながら循環型社会の実現に向け、積極的に貢献してまいります。

(6)国際技術委員会(BCOJ:Brewing Congress of Japan)

魅力的な商品の開発、美味しさの実現、安全の確保等に関する技術的な知見を高めていくため、ビール酒造組合では「国際技術委員会(BCOJ)」を設置しております。主として、

・ビール醸造技術の向上と品質保証に関る分析法の整備
・海外機関との協働による分析法の国際標準化推進
・国内・海外ビール関連組織との技術交流

の三点を課題として活動しております。

 本年7月に米国オレゴン州ポートランドで、4年に1度のWBC(World Brewing Congress)が開催されました(出席者約1,200名)。その中で、BCOJでは「将来の技術」と銘打ったシンポジウムを開催するとともに、ビール 各社から11題の口頭発表、9題のポスター発表を行いました。

 本年11月8日と9日には、永田町の星陵会館において、WBCをはじめとした海外の醸造学会でビール各社が発表した演題を再度英語で講演する「BCOJ年次大会」を開催する予定です。

 今後とも、こうした活動を通じて、世界でも最先端のビール醸造技術の開発に取り組んでまいります。

(7)安全・安心

 ビール酒造組合は、お客様に「安心」をお届けできるよう、加盟各社とともに原材料から製品に至るまで、法令の遵守はもとより、安全性の確保に全力を挙げて取り組んでおります。

 昨年3月11日に発生した東日本大震災による福島第一原発事故以降、食品の放射能汚染に対するお客様の関心が高まっております。ビール酒造組合 は、本年3月12日に厚生労働省から公表された「食品中の放射性物質に関する『検査計画、出荷制限等の品目・区域の設定・解除の考え方』の改正について」 に基づき、農林水産省等の関係諸機関と連携を密にし、ビール原料の大麦、ホップ等の放射能汚染に対する安全性の確保を最重要課題として取り組んでおりま す。

 具体的には、ビール各社が原料の放射能を独自に検査すると共に、自治体による検査の実施についても農林水産省他関係機関に働きかけを行なっており ます。本年産の大麦は自治体で全ロットの検査を行なっていただいており、測定値は生産当該県や厚生労働省ホームページ等で公開されております。ホップにつ いては、現時点で東北地方の国産ホップ生産4県のうち、秋田県のみが自治体による検査を表明しておりますが、他3県は表明しておりません。

 また、その他の安全性確保の取り組みとして、国産ビール大麦の安全性評価項目を国際基準に準拠させる取り組みに着手してまいります。

 ビール酒造組合は、酒税の保全を責務として、以上述べました事業を通じて自由公正な事業活動の機会を確保し、酒類業界の安定と健全な発展に努力を傾注してまいります。

 昨年の東日本大震災から1年5ヶ月が経過し、日本経済も徐々に落ち着きを取り戻しつつありますが、復興への道のりはまだ始ったばかりです。

 ビール酒造組合加盟各社は、企業の社会的責任のもと、今後も継続して復興への支援に全力で取り組んでまいります。

 今後とも当組合の活動に対しまして、ご理解とご支援を賜りますよう、心からお願い申し上げます。

以上

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